It all depends on the liver.

飲みすぎないように文章を書く

27年生きてきて、やっと映画と映画館が苦手じゃなくなってきた

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マンガの読み方も小説の読み方も株式チャートの見方もジャズの聞き方も別にわからないのだが、映画の素養と才能が一番ない気がしている。

人生で一番古い映画の記憶は、幼稚園で見せられた「天空の城ラピュタ」だ。幼稚園児にとっては、正直なんかこわかった。

小学校低学年のころ、おばあちゃんが「もののけ姫」に連れて行ってくれた記憶もあるが、「持ってきたヨーグルトがあるからロビーで食べろ」と言われて食べてから場内に入ったらすでに上映開始30分くらいが経過していたので、まったく話がわからなかった。何か白いもの(コダマですね)がうじゃうじゃいるのがこわかった記憶しかない。

学童保育で「タイタニック」を見せられた記憶もあるんだけど、やっぱり7歳児には何が起きているのかわからなかった。

近所に「ファーストラン」というレンタルショップがあって、父親はそこで毎週ビデオを借りては映画を観ていたし、毎週の金曜ロードショーみたいなやつも録画していたので、受動的に摂取した映画自体はそれなりにあった気がする。「ホームアローン」や「トイストーリー」、「ジュマンジ」のような家族で見られる映画から、「CUBE」や「SAW」のようなちょっとえぐいやつまで、お茶の間で流れていた記憶はある。インターネットに常時つないでられる時代でもなかったですし、家庭の娯楽のうち大きな時間を占めていただろう。

しかし、父親が借りてくるっちゃ借りてくるのと、子供のおこづかいで借りるにはビデオはちょっと高かったので、自発的に借りようという気にはならなかった。

また、当時としてはめずらしく「ファーストラン」はコミック単行本と雑誌の貸出を行っていたので、私は第二水曜日のサービスデー(コミック1冊のレンタル料金が35円になる神デー)を狙っては、大量にコミックを借り込み、映画の流れるリビングで、『BLACK CAT』とか『X-エックス₋』とか『妖しのセレス』とかに集中していた。

映画館に行こうなどという気は、もっと起きなかった。「起きない」というより、そういう選択肢が特になかった。月のお小遣い1000円はすべて「LaLa」と「花とゆめ」の購入にあてられており、そもそも映画に限らず、それ以外への出費の余地がなかった。(よく考えたら中学生までの自分、月1000円で暮らしていたんだな……すご……)

そのためむしろ、10代のころに自発的に映画館に観に行った作品ははっきりと覚えている。以下の6つである。

戦場のピアニスト
踊る大捜査線 The Movie 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』
バッド・エデュケーション
『ブロークンバック・マウンテン』
オペラ座の怪人
『縞模様のパジャマの少年』

他にも「あ、これ観たいかも」と思う作品はいくつかあったはずなのだが、当時の私は「映画館は人と行くもの」という先入観と、「しばらくしたらレンタル開始されるし」という思いが強く、誘える人を探したりどうしようか迷ったりしている間に上映期間が終わっており、結局別にレンタルもしない……ということが多かった。

学生時代に入って瞬間風速的に『劇場版 ハゲタカ』にハマり、同じ映画を5回も劇場に見に行ったうえで、ハマったキャストの出演する映画のエキストラにも参加するところまでやったものの、あくまでその作品単体でハマったにすぎず、まだ「映画館」や「映画」自体になじむというところまではいかなかった。

そもそも私はせっかちなので、「自分のペースで止めたりすすめたりすることができず、コンテンツのペースに合わせて鑑賞させられる」スタイルが苦手で、アニメやドラマもあまり見ないほうなのだ。好きなアニメも、リアルタイムでは視聴するが、DVDパッケージを買った後ディスクを機械に入れるのすらめんどくさくてシュリンクを開けないことすらある。ようは異常にめんどくさがりであるというのもあるな……。

それが社会人になってからは、わりと映画を映画館で観ている。自分史における「わりと」なので、「映画が好き」と公言できる人には全然及ばないのだけど、だいたい月1~2本はコンスタントに観たいものがあるし、実際に観に行っている。

一体なんでなんだろう?と考えたときに、以前デメリットと感じていた「自分のペースで止めたりすすめたりできない」ことこそが、今の私には合っているのかもしれないな~ということに気づいた。

つまり、本やマンガは「自分のペースで中断できる」ので、社会人になって娯楽の選択肢が増えて以降、中断してそのまま放置してしまうことが多く、最後まで読み終えるのにめちゃくちゃ時間がかかってしまうのだ。

それに対して映画を映画館で観るとなれば、事前に時間を調べてその場におもむく必要があり、ある程度高い値段でチケットを買う必要があり、基本的には最後まで座って鑑賞している必要がある。まあやっぱり行くのやめたり、途中で退出したりする自由もあるけれど、本やマンガに比べると、一度レールに乗れば、最後までコンテンツのペースに流されることができる。

本やマンガを読んでいるときにうっかりSNSを見たくなったらそのまま見てしまっていつのまにか1時間くらい経っていたりするが、映画館ではマナー上自分をおしとどめることができる。本やマンガを読んでいるときに仕事のメールが来てしまったら対応しているうちに1時間くらい経っていたりするが、映画館ではマナー上そもそも仕事の到着に気づかないので、「まあ今すぐ対応するような仕事は今のところないはずだし大丈夫」とおおらかに構えていられる。映画館にいる間はインターネットと社会から自由になれるのだ。これはインターネット中毒の私にとって発見だった。

そして、映画館に別に誰かと行く必要もないんだということも、社会人になって気づいた。一人で行くという選択肢が持てたことで、ちょっと仕事が早く終わった日や、副業の原稿が終わった休日の夜などにポッと観に行くことができるようになって、観る頻度が上がったのだと思う(最近は一周回って人と感想を言い合うのも楽しい&人と「じゃあこの日の朝に行きましょう」と決めておくと仕事の効率が上がるという気づきもあったので、わりと人と観ているが)。

残念ながら自宅のテレビでは母がえんえんと海外ドラマを見ているため、私にテレビの使用権がなく、またPCひらくと仕事かインターネットをしてしまうので、マジで映画を観ていないのですが、この調子で過去の作品もちょっとずつ見ていけたらいいなとは思う。「ながら鑑賞」をできる環境を自宅で構築すればいいんだけど。

映画の教養がまったくないのでときどきハジをかくこともあるのですが(例:職場の先輩に「コーエン兄弟って知ってますか?」と聞いて失笑される)、知らないことが多いのでいろいろ知れるのも楽しいとひらきなおって、今年も映画館に足を運ぼうと思います。

 

ほんとは『ラ・ラ・ランド』の感想を書こうと思ったのですが、なんか全然違う話になった……。

 

【余談】

そういえば毎年元旦って何の店もやってなくて退屈だな~~って思ってたんですけど、2014年くらいに「元旦は映画1000円(映画の日だから)」と知って「かぐや姫の物語」を観に行ってから毎年かならず元旦に映画を観ていて、その予告編で観た映画が気になった結果また観に行って……という流れで年間に見る本数も増えた気がします。元旦に映画を観ようキャンペーン、わりと効くのでは?

 

2014年

かぐや姫の物語」「ブリング・リング」

2015年

「ベイマックス」

2016年

「きみといた2日間」

2017年

「シング・ストリート」