It all depends on the liver.

飲みすぎないように文章を書く

『白い薔薇の淵まで』(中山可穂)

いつでもどこか遠くへ行きたい、ここではないどこかへ。それなのに、行く術も行くだけの覚悟もなく、どこに行き着けばいいかもわかっていない。 10代の頃そんなふうに思っていたのはーーそして20代、30代になってもその気持ちを抱えているのもーーきっと私だ…

現実に抗う手段としてのロマンスーー『赤と白とロイヤルブルー』(ケイシー・マクイストン)

今年の3月、メンズ雑誌「GQ」の「アジアを越境するボーイズラブ」特集に参加した。 www.gqjapan.jp 「2gether」に代表されるBLドラマブームに端を発する特集で、私はBLレーベル出身で本屋大賞を受賞された凪良ゆうさんのインタビューと、初心者に薦めたいマ…

しゃべってるのに伝わらないーー『カンバセーションズ・ウィズ・フレンズ』(サリー・ルーニー)

雑誌の「百合」特集で取材を受けた。最近自分の半生を振り返って、私って10〜20代の時何してたんだっけ、何もしてないな、意識でも失っていたのか……?と落ち込んでいたのだが、取材のおかげで、そういえば百合とBLを無限に読んでいたのだ、と思い出した。 当…

恋愛と自動車運転の違いーー『21世紀の恋愛 いちばん赤い薔薇が咲く』

恋愛が苦手だ。 恋愛は自動車運転に似ている、と思う。私は大学時代に運転免許を取得しているのだが、その後一度もハンドルを握ったことがない。アクセルとブレーキを踏み分けながら、サイドミラーやバックミラーで周囲に気を配り、車間距離を意識して、右折…

逸脱と波打ち際ーー『非国民な女たち 戦時下のパーマとモンペ』

非国民な女たち-戦時下のパーマとモンペ (中公選書) 作者:飯田 未希 中央公論新社 Amazon 『だから私はメイクする』という本を編著した。2018年のことだ。 自分が「おしゃれ」がわからない人間なのでみんなの事情を知りたいというところから始まった企画だっ…

「政治的」であることーー「三島由紀夫VS東大全共闘〜50年目の真実〜」

2020年の春、映画「三島由紀夫VS東大全共闘 〜50年目の真実〜」の話ばかりしていた。 gaga.ne.jp 1969年5月13日、学生運動の嵐ふきあれるさなかに、新左翼的思想の筆頭である東大全共闘のメンバーの一部が、三島由紀夫を招いて討論会を行った。その映像を主…

「ルックバック」感想(あくまで自分のための)

※この記事では藤本タツキ「ルックバック」のネタバレ、及び関連する2019年7月18日の京都アニメーション事件の話に触れています。 2019年7月18日木曜日、東京はじっとり蒸し暑かった。 朝から薄暗い曇り空で、湿気がからだにまとわりついてくるのがたまらなく…