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It all depends on the liver.

飲みすぎないように文章を書く

わたしは本当の失恋を知らない

感想とか

失恋ショコラティエ』の8巻を読んだ。

ドラマになっていたからご存じの人も多いと思うが、『失恋ショコラティエ』はとてもこわいマンガだし、水城せとなさんはとてもとてもこわいマンガ家だ。

そのことは骨身にしみていて、身がまえて読んでいたにもかかわらず、ガツンとやられてしまった。

もちろんマンガの内容自体にもやられたのだけど、今回私を串刺しにしたのはあとがきだ。

あとがきで水城さんは、『失恋ショコラティエ』が次の9巻で終わりを迎えるということと、この作品を描きながら、昔観たある映画のことを思い出したことを語る。

その映画は、1人の男がある女性に激しい恋をし、翻弄されて地位も家庭も捨てるのだけど、結局彼女を手に入れられない、という筋書きのフランス映画なのだという。

彼が「あれから一度だけ彼女を見かけた……ごく普通の女だった。」と独白して物語は幕を閉じるらしいのだが、水城さんはこの映画が自分の創作にとても大きな影響を与えていると思う、のだそうだ。

衝撃だったのは、「恋をしている間どんなに相手が特別に見えても、時がすぎればそれは『普通』に戻ってしまう」という、当たり前だしどこかで意識しているんだけど普段は気に留めていなかったことを、不意打ちで思い出させられてしまったからだった。

私には、別に告白とかはしてないし、いつから恋心だったかもわからないし、その間別の人とだって付き合ってたし、あれって恋だったのかもよくわからないんですけど、5年以上好きだった人がいる。私も好きだったし、相手も私のことを好きだったと思う(相手のほうは恋心ではなかったかもしれないし、でも時々は恋だったんじゃないかなとも思う)。

私自身がきわめて自分勝手だったために、ある出来事で相手を困らせ、徹底的に私を嫌いになるような事態を招き、結果かれこれ4年ほど会っていない。ぶっちゃけ20代を迎えてから会っていない。……正確にいうと、そうなってからも何度か、共通の知人の集まりで一緒になりはしたんだけど、一切話をしていない。話しかけるとしたら、おそらく私のほうから話しかけるべきなのだけど、できていない。

それって、一応互いに謝罪して絶交は解かれてはいるものの、一度関係がぎくしゃくしてしまったのを修復できる気がしなくてコミュニケーションしがたいんだ、と思っていたんだけど、水城さんのあとがきを読んで気づいてしまった。

自分勝手な話ではあるが、たぶん私は、相手が自分にとって「普通」になってしまったことを確認することで、恋の終わりを認めてしまうのがイヤなのだ。

もし、正面から目をあわせて、昔いっしょに笑ってたときのような、楽しさとかときめきとかキラキラとかがなかったら、当時感じていた楽しさとかときめきとかキラキラまで失われてしまったような気がして、そしてそんなものを大切にしていた自分がすごくみじめに思えてきそうで、私は彼女と到底顔をつきあわせて言葉をかわせる感じがしない。

そして、私は逆に、相手にとって自分が「普通」になってしまったのではないかというのを確認してしまうことも、とてもとてもおそれている。

だけど、水城さんのあとがきは、その、「普通」になるところまでが、恋なんだということを暗に意図しているように思えた。

実は「失恋」というのは、本当は相手と別れたりフラレたりする瞬間ではなくて、自分にとって相手が「普通」になってしまった瞬間のことを言うのではないだろうか?

だって、爽太は、サエコにフラれているけれど、サエコへの想いはそこで消えずに、爽太の創作にいかされている。『失恋ショコラティエ』でこれまで描かれている爽太は、決して「恋」を失っている状態ではなくて、いままさに「恋」をしている状態なのではないだろうか。

そもそも恋の始まりだって、別に双方同時発生するものではないのだから、「失恋」だって、相手が自分の感情を受け取ってくれるかどうかで決まるのではなく、自分が相手をどう思うかで決まるはずなのだ。

だから、『失恋ショコラティエ』の結末で描かれるのは、爽太が「失恋」する瞬間であり、それはサエコが「普通」の女になる瞬間なのだと、私は思う。(水城さんのことだからもう一捻り意地悪があるのかもしれないけれど)

爽太の「失恋」を見届けたら、私も「失恋」できるようになるだろうか?

それとももしかして、彼女に「普通」でいてほしくない、私を「普通」と見てほしくない、と思っている私は、まだ「失恋」できないのだろうか?

とにかく9巻が楽しみです。

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※もう9巻出てるじゃんと思うかもしれないですが、『失恋ショコラティエ』8巻発売時(2014年5月)に書いたものが出てきたものの、あまりにも自分が青くさくてびっくりしたので、そのままアップしてみただけです。あ、青い………。実際どうだったか気になった方はぜひ9巻までお読みください……。