It all depends on the liver.

飲みすぎないように文章を書く

レビュー・感想

2021年に観た映画ーーあるいは、「有害な男らしさ」の描き方のこと

年の暮れに、その年観た映画を振り返っています。 note.com note.com note.com 初めてから四年経っている。月日の流れは早い……。劇場で観た映画のみを数えているのですが、2018年は37本、2019年は43本、2020年は60本という結果でした。時間もあったのだろう…

『白い薔薇の淵まで』(中山可穂)

いつでもどこか遠くへ行きたい、ここではないどこかへ。それなのに、行く術も行くだけの覚悟もなく、どこに行き着けばいいかもわかっていない。 10代の頃そんなふうに思っていたのはーーそして20代、30代になってもその気持ちを抱えているのもーーきっと私だ…

現実に抗う手段としてのロマンスーー『赤と白とロイヤルブルー』(ケイシー・マクイストン)

今年の3月、メンズ雑誌「GQ」の「アジアを越境するボーイズラブ」特集に参加した。 www.gqjapan.jp 「2gether」に代表されるBLドラマブームに端を発する特集で、私はBLレーベル出身で本屋大賞を受賞された凪良ゆうさんのインタビューと、初心者に薦めたいマ…

しゃべってるのに伝わらないーー『カンバセーションズ・ウィズ・フレンズ』(サリー・ルーニー)

雑誌の「百合」特集で取材を受けた。最近自分の半生を振り返って、私って10〜20代の時何してたんだっけ、何もしてないな、意識でも失っていたのか……?と落ち込んでいたのだが、取材のおかげで、そういえば百合とBLを無限に読んでいたのだ、と思い出した。 当…

恋愛と自動車運転の違いーー『21世紀の恋愛 いちばん赤い薔薇が咲く』

恋愛が苦手だ。 恋愛は自動車運転に似ている、と思う。私は大学時代に運転免許を取得しているのだが、その後一度もハンドルを握ったことがない。アクセルとブレーキを踏み分けながら、サイドミラーやバックミラーで周囲に気を配り、車間距離を意識して、右折…

逸脱と波打ち際ーー『非国民な女たち 戦時下のパーマとモンペ』

非国民な女たち-戦時下のパーマとモンペ (中公選書) 作者:飯田 未希 中央公論新社 Amazon 『だから私はメイクする』という本を編著した。2018年のことだ。 自分が「おしゃれ」がわからない人間なのでみんなの事情を知りたいというところから始まった企画だっ…

「政治的」であることーー「三島由紀夫VS東大全共闘〜50年目の真実〜」

2020年の春、映画「三島由紀夫VS東大全共闘 〜50年目の真実〜」の話ばかりしていた。 gaga.ne.jp 1969年5月13日、学生運動の嵐ふきあれるさなかに、新左翼的思想の筆頭である東大全共闘のメンバーの一部が、三島由紀夫を招いて討論会を行った。その映像を主…

「ルックバック」感想(あくまで自分のための)

※この記事では藤本タツキ「ルックバック」のネタバレ、及び関連する2019年7月18日の京都アニメーション事件の話に触れています。 2019年7月18日木曜日、東京はじっとり蒸し暑かった。 朝から薄暗い曇り空で、湿気がからだにまとわりついてくるのがたまらなく…

存在しない“無敵の遊園地”ーー「東京BABYLON」感想

東京・杉並区で生まれて、31年を過ぎた。 親の離婚もあり、首都圏内を転々として育ったから、思い出のある場所は少ない。引っ越した後も習い事のために訪れ続けた荻窪のタウンセブンとか、中学受験中の癒しだった吉祥寺のアニメイトとか、「いま私が死んだら…

一穂ミチさんが直木賞候補になったので、オタクがおすすめ作品を5冊紹介します

こんにちは。20代半ばまで人生を商業BL小説を読むことに捧げていたライター、ひらりさです。朝起きたら、長年推していた作家さんの一人である一穂ミチさんの最新作『スモールワールズ』が直木賞の候補作としてノミネートされていて、びっくりしたし嬉しいし…

新時代の福音ーー「推し、燃ゆ」(宇佐見りん)書評

「推す」という動詞から「推し」という名詞が派生して、20年も経っていないそうだ。お小遣いをつぎ込んで漫画を買い、始発に乗って声優イベントに参加し、人生の大半をオタクとして過ごしてきた平成生まれとしては、短いような長いような、不思議な気持ちで…

セックスできないのは誰と誰か?ーー「ウェンディ、才能という名前で生まれてきたかった?」(瀬戸夏子)メモ

予告された時から楽しみにしていた、「文藝」2021年春号掲載、瀬戸夏子「ウェンディ、才能という名前で生まれてきたかった?」の感想をとりあえずメモ、模索段階でもいいのでまとめておこうと思って、ブログを開いた。 www.amazon.co.jp 本作は、主人公「わ…

それは、私たちだけのものーー『持続可能な魂の利用』(松田青子)書評

《あの人は消えてなんかいない/あなたの世界からいなくなっただけ》 現代社会が内包するグロテスクさを、その中でもがく女性たちに寄り添う姿勢を貫きながら、コミカルかつシニカルに描いてきた作家・松田青子。「普通」「当たり前」「みんな」「そうすべき…

滑稽で愚かな彼らーーミュージカル「スリル・ミー」感想

4月に、ミュージカル「スリル・ミー」を3度鑑賞した。 horipro-stage.jp 「スリル・ミー」は、2003年にNYのオフブロードウェイで初上演された二人芝居のミュージカルで、日本には2011年に初上陸した。1924年にアメリカで発生した、ニーチェの超人思想信奉者…

恋愛観を少女漫画で培った女にこそ沁みる、漫画「天然素材でいこう。」の味わい深さ

マンガParkの全巻無料キャンペーンに踊らされ、朝も晩もおうちで白泉社作品を読み続けている。 『動物のお医者さん』も『天使禁猟区』も無料期間中に読み終わらなかったけれど、10代の「花とゆめ」「LaLa」へのパッションが再燃してしまい、深夜に「あのマン…

いつもの料理を、ひと味変えて? シェフ=キュレーターの技にむせび泣く「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」展

箱根に来ています。 「仕事を忘れて温泉旅館でのんびりしたい……」というのが最初の動機だったのですが、美術館密集地帯である箱根では、興味惹かれる企画展もあれこれやっていて、1日目である今日はポーラ美術館に行くことに。 1月にも一度訪問し、とても…

誰かの記憶に残るということ−−瀬戸夏子×吉田隼人「早稲田から眺める現代短歌クロニクル」

わたしには、西武新宿線に対してのほとんど合理的でないトラウマがあって、それに付随する苦手意識を強く抱いている。 たとえば、大学時代にちょっとだけ付き合っていた男性のバイト先が、今はなきあおい書店高田馬場店だったけれど、3ヶ月でサクッと別れた…

5月病を吹き飛ばす全力ジェットコースター映画「神と共に 第1章:罪と罰」を、オタク女が早口で語る

長期連休明けの5月。 平成だろうが令和だろうが、休みを有意義に過ごした人にとってもうだうだ過ごした人にとっても、至極憂鬱な毎日に感じられているんじゃないでしょうか。 少なくともわたしはめちゃくちゃアンニュイで、そこに急激な灼熱サマーの襲来も…

彼女たちは軽やかに踊り続ける――「岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟」展

原美術館、東京都写真美術館、横浜美術館、京都国立近代美術館など、どんな展示がやってるかにかかわらず、定期的に足を運びたくなる美術館がいくつかあるんだけど、そのうちの一つが、東京都庭園美術館だ。 目黒駅から徒歩5分ほどの距離にあるこの美術館は…

痛みは反復されて、痕になるーーソフィ・カル「限局性激痛」展

ずっと東京に住んでいるわりに品川駅で降りる機会がほとんどない人生を送ってきたのだが、新年早々、そのあまり縁のない場所に行く必要ができた。 原美術館で1月5日よりスタートした、ソフィ・カル「限局性激痛」展をみるためである。 bijutsutecho.com ここ…

この5年間、元旦に観た映画を振り返る

新年あけましておめでとうございます。 2017年〜2018年の年末年始は祖父が亡くなったばかりで「おめでとう」というのも言いづらく、身も心もバタバタしていて、何やっていたのか全然覚えていない……。 まあ実家も近所だし、親戚も少ないので、社会人になって…

旅の道中で読むとおもしろいマンガ5選

金〜土を使って、根府川(江之浦測候所)〜湯河原〜三島に旅行に行ってきました。 とにかく江之浦測候所に行きたくて組んだ旅程&三島に行くことにしたのも当日という行き当たりばったりでしたが、楽しかった〜。 さて、旅については改めて書くかもなのですが…

ミュージカル「少女革命ウテナ ~白き薔薇のつぼみ~」を観てきた

musical-utena.com ピンクの髪の女の子が主人公の何やら仰々しいタイトルのアニメが始まるということは、他番組を観ているときに挿入されたCMで知っていた。 しかし、小学生だった私は、「なんか不思議なタイトルだなあ」と思っただけで、華麗にもスルーして…

それは暴力の話−−「初恋と不倫」第二夜『不帰(かえらず)の初恋、海老名SA』観ました

太賀&松岡茉優、映画館で上演の「不帰の恋、海老名SA」で朗読劇初挑戦 : 映画ニュース - 映画.comより 人生には3つの坂があるという。 「上り坂、下り坂、まさか」である。 このフレーズが大きなテーマとなっているドラマ「カルテット」を、私はとても楽し…

かわいくて最強にきもちいい資本主義――「バーレスク東京」に行ってきました

「資本主義に屈してるって感覚、ありますか?」 8月に『浪費図鑑』という本を出し、いろいろ取材をしてもらうことが増えたのですが、そのなかで印象に残った質問のひとつです。『悪友』『浪費図鑑』の刊行を機に、お金やお金の使い方について考えることは増…

私が家を燃やしそうになった話、あるいは「マイヤーウィッツ家の人々」の感想

私には弟がいる。2歳歳下で、昨年の4月に私より先に一人暮らしを始め、現在は立川に住んでいる。 弟と私はとても仲が悪い。というより、弟に一方的に嫌われている。 嫌われている理由はシンプルで、私が弟の世話をしたり優しくしたりということをしなかっ…

その星空はほんものか?――「プラネタリウム」「ドリーム」を観て

中高のころ、天文部に所属していた。 天文部といえば天体観測だろうと思われるかもしれない。実際、うちの学校にはかなり立派な天体ドームが存在しており、そのなかには京都の製作所から購入した(そして故障すると京都の製作所に出張修理を頼まないといけな…

「牯嶺街少年殺人事件」A Lollypop or A Bullet

普段なら、どれだけ自分が興味のありそうな筋書きの映画でも、上映時間が3時間以上あるとわかれば躊躇していた。それに、映画の教養がないのでエドワード・ヤンの名前も「牯嶺街少年殺人事件」の名前も知らなかった。それでも、別に知っていたわけでもない"…

『若手ライターはいかに生きるべきか』読みました

友人でありライターの青柳美帆子さんが登壇したイベントの内容をまとめた電子書籍『若手ライターはいかに生きるべきなのか』を読みました。 若手ライターはいかに生きるべきか 作者: 米光一成,青柳美帆子 出版社/メーカー: こどものもうそうブックス 発売日:…

2017年に観たもの覚書き

できれば一言ずつ感想も書きたい…… 【映画】 「シング・ストリート」 「永い言い訳」 「沈黙」 「マグニフィセント・セブン」 「ザ・コンサルタント」 「Drストレンジ」 「ミス・ペレグリンと奇妙な子供たち」 「ラ・ラ・ランド」 「お嬢さん」 「おとなの事…