It all depends on the liver.

飲みすぎないように文章を書く

天才と女癖

オスロに来ている。今年観たノルウェー映画 「The Worst Person in the World(わたしは最悪)」がとてもよかったからだ。調べると、本作のロケ地はオスロのオフィシャルトラベルガイドにまとめられており、ロケ地訪問をすることに決めた。すでにオスロに三…

街と空欄

黒い服を着ている人が多い。喪に服すためとも、単に正装として着てきたともとれる。だって、ここはロイヤルオペラハウスだから。昨日、女王が逝去した直後の演目はキャンセルになったという。私が二ヶ月前に予約し、首を長くして楽しみにしていたオペラ「サ…

街と慰め

この街に来る前、この街のことを書かないかという提案をいくつかもらった。断ってしまった。わたしにその資格はないと思った。一年しかいない予定だし、年末年始に一時帰国するためのチケットをとっているし、最初からかなり腰砕け感があった。なんだかんだ…

《他者》をスパイスとする搾取性と、デート文化におけるアジア人女性フェチ

はじめに “It’s such a privilege to be able to experience another person’s culture.” 「異なる文化に接せられるというのはある種の特権だからね」 ーーGet Out, 2017 昨年からイギリスに留学している。最初は授業についていけなすぎてピーピー泣いていた…

夏が少女に終わりを告げたーー中島梓『小説道場』

この作品はおそらく、文学界の新人賞に投稿されてもちっともおかしくないし、あるいはそういう新人賞受賞作品として登場してきたって特に見劣りがするわけでもないような気がする。JUNE、というのはあるいは「この小説以前」か「この小説以後」なのかもしれ…

彼女たちが革命だった頃ーー『密やかな教育: 〈やおい・ボーイズラブ〉前史』

このJUNE―BLというゲームは、このゲーム に参加しているだけで、ホモソーシャルの分解というフェミニズム的な行為に加担している仕組みになっている、つまりゲーム自体にフェミニズム的実践がそもそも組み込まれているのだが、ゲーム本体のパッケージにはフ…

言葉がたとえ無力でもーー映画「Mishima:A Life in Four Chapters」

1 高校の記憶 2 没後50年、そして「Mishima:A Life in Four Chapters」 1 高校の記憶 この章は自分語りに終始する。コンテンツの感想だけ知りたい人は2まで飛んでも問題ない。 市ヶ谷の中高一貫校に通っていた。 周辺は、南西から北東へと長く伸びる総武線…

ひらりさ 2022年の活動履歴

この記事は、ライター・ひらりさの執筆やイベント出演など単発仕事のアーカイブです。雌猫名義だが個人として寄せたものも、一部含まれます。 自己紹介、連載紹介、仕事の依頼については以下記事をご覧ください。 zerokkuma.hatenablog.com 2021年のアーカイ…

「自分ひとり」の練習

昨年9月から一年間、英国の大学院に通っている。秋学期を終えた1月、最初の振り返りブログを書いた。 zerokkuma.hatenablog.com 二学期めにあたる春学期は4月頭に終わったが、宿題が終わらなかったので、今日まで書けなかった。スケジュール的にもそんな…

英国大学院で秋学期を生き延びたので、ざっくり振り返る

新年明けましておめでとうございます。 2021年夏に会社を辞め、9月にロンドンにある大学の文学系修士課程(MA)に入学しました。最初のほうは授業が全く聞き取れずにショックを受け、「一学期で退学した場合に返還される学費」を調べるほどにパニクっていた…

2021年に観た映画ーーあるいは、「有害な男らしさ」の描き方のこと

年の暮れに、その年観た映画を振り返っています。 note.com note.com note.com 初めてから四年経っている。月日の流れは早い……。劇場で観た映画のみを数えているのですが、2018年は37本、2019年は43本、2020年は60本という結果でした。時間もあったのだろう…

『白い薔薇の淵まで』(中山可穂)

いつでもどこか遠くへ行きたい、ここではないどこかへ。それなのに、行く術も行くだけの覚悟もなく、どこに行き着けばいいかもわかっていない。 10代の頃そんなふうに思っていたのはーーそして20代、30代になってもその気持ちを抱えているのもーーきっと私だ…

現実に抗う手段としてのロマンスーー『赤と白とロイヤルブルー』(ケイシー・マクイストン)

今年の3月、メンズ雑誌「GQ」の「アジアを越境するボーイズラブ」特集に参加した。 www.gqjapan.jp 「2gether」に代表されるBLドラマブームに端を発する特集で、私はBLレーベル出身で本屋大賞を受賞された凪良ゆうさんのインタビューと、初心者に薦めたいマ…

しゃべってるのに伝わらないーー『カンバセーションズ・ウィズ・フレンズ』(サリー・ルーニー)

雑誌の「百合」特集で取材を受けた。最近自分の半生を振り返って、私って10〜20代の時何してたんだっけ、何もしてないな、意識でも失っていたのか……?と落ち込んでいたのだが、取材のおかげで、そういえば百合とBLを無限に読んでいたのだ、と思い出した。 当…

恋愛と自動車運転の違いーー『21世紀の恋愛 いちばん赤い薔薇が咲く』

恋愛が苦手だ。 恋愛は自動車運転に似ている、と思う。私は大学時代に運転免許を取得しているのだが、その後一度もハンドルを握ったことがない。アクセルとブレーキを踏み分けながら、サイドミラーやバックミラーで周囲に気を配り、車間距離を意識して、右折…

逸脱と波打ち際ーー『非国民な女たち 戦時下のパーマとモンペ』

非国民な女たち-戦時下のパーマとモンペ (中公選書) 作者:飯田 未希 中央公論新社 Amazon 『だから私はメイクする』という本を編著した。2018年のことだ。 自分が「おしゃれ」がわからない人間なのでみんなの事情を知りたいというところから始まった企画だっ…

「政治的」であることーー「三島由紀夫VS東大全共闘〜50年目の真実〜」

2020年の春、映画「三島由紀夫VS東大全共闘 〜50年目の真実〜」の話ばかりしていた。 gaga.ne.jp 1969年5月13日、学生運動の嵐ふきあれるさなかに、新左翼的思想の筆頭である東大全共闘のメンバーの一部が、三島由紀夫を招いて討論会を行った。その映像を主…

「ルックバック」感想(あくまで自分のための)

※この記事では藤本タツキ「ルックバック」のネタバレ、及び関連する2019年7月18日の京都アニメーション事件の話に触れています。 2019年7月18日木曜日、東京はじっとり蒸し暑かった。 朝から薄暗い曇り空で、湿気がからだにまとわりついてくるのがたまらなく…

単著『沼で溺れてみたけれど』が出ました、そして会社を辞めて家を引き払いロンドンに行く

皆さん、こんにちは。 表題の通りですが、ひらりさ名義で初の単行本となる『沼で溺れてみたけれど』を刊行しました。 「FRaU web」の連載をもとに、いろいろな形で”普通の幸せ”から外れた価値観を持っていたり、出来事を経験したりした女性の話を聞き、私が…

存在しない“無敵の遊園地”ーー「東京BABYLON」感想

東京・杉並区で生まれて、31年を過ぎた。 親の離婚もあり、首都圏内を転々として育ったから、思い出のある場所は少ない。引っ越した後も習い事のために訪れ続けた荻窪のタウンセブンとか、中学受験中の癒しだった吉祥寺のアニメイトとか、「いま私が死んだら…

一穂ミチさんが直木賞候補になったので、オタクがおすすめ作品を5冊紹介します

こんにちは。20代半ばまで人生を商業BL小説を読むことに捧げていたライター、ひらりさです。朝起きたら、長年推していた作家さんの一人である一穂ミチさんの最新作『スモールワールズ』が直木賞の候補作としてノミネートされていて、びっくりしたし嬉しいし…

新時代の福音ーー「推し、燃ゆ」(宇佐見りん)書評

「推す」という動詞から「推し」という名詞が派生して、20年も経っていないそうだ。お小遣いをつぎ込んで漫画を買い、始発に乗って声優イベントに参加し、人生の大半をオタクとして過ごしてきた平成生まれとしては、短いような長いような、不思議な気持ちで…

ひらりさ×瀬戸夏子トークイベント「女と女」選書リスト

2021年5月29日、瀬戸夏子さんをゲストにお呼びして、同人誌「女と女2」の刊行記念イベントを行いました。来場・視聴くださった皆さん、ありがとうございました。 bookandbeer.com ログインした #女と女 pic.twitter.com/9bUowVTjnE — ひらりさ (@sarirahira…

セックスできないのは誰と誰か?ーー「ウェンディ、才能という名前で生まれてきたかった?」(瀬戸夏子)

予告された時から楽しみにしていた、「文藝」2021年春号掲載、瀬戸夏子「ウェンディ、才能という名前で生まれてきたかった?」の感想をとりあえずメモ、模索段階でもいいのでまとめておこうと思って、ブログを開いた。 www.amazon.co.jp 本作は、主人公「わ…

それは、私たちだけのものーー『持続可能な魂の利用』(松田青子)書評

《あの人は消えてなんかいない/あなたの世界からいなくなっただけ》 現代社会が内包するグロテスクさを、その中でもがく女性たちに寄り添う姿勢を貫きながら、コミカルかつシニカルに描いてきた作家・松田青子。「普通」「当たり前」「みんな」「そうすべき…

滑稽で愚かな彼らーーミュージカル「スリル・ミー」感想

4月に、ミュージカル「スリル・ミー」を3度鑑賞した。 horipro-stage.jp 「スリル・ミー」は、2003年にNYのオフブロードウェイで初上演された二人芝居のミュージカルで、日本には2011年に初上陸した。1924年にアメリカで発生した、ニーチェの超人思想信奉者…

ひらりさ 2021年の活動履歴

この記事は、ライター・ひらりさの執筆やイベント出演など単発仕事のアーカイブです。雌猫名義だが個人として寄せたものも、一部含まれます。 自己紹介、連載紹介、仕事の依頼については以下記事をご覧ください。 zerokkuma.hatenablog.com 12月 www.shincho…

ひらりさ 2020年の活動履歴

この記事は、ライター・ひらりさの執筆やイベント出演など単発仕事のアーカイブです。雌猫名義だが個人として寄せたものも、一部含まれます。 プロフィール記事(書籍や連載の紹介はこちらで行っています)と合わせてお読みください。 zerokkuma.hatenablog.…

ライター・ひらりさの自己紹介と、お仕事の依頼について

ライター・ひらりさにお仕事を頼んでみたい方向けに簡単な自己紹介と仕事履歴をまとめています。ぜひご一読いただければ幸いです。 まずは自己紹介 最新で利用しているプロフィールはこちら。 1989年生まれ。会社員、「劇団雌猫」メンバー。オタク女性ユニッ…

恋愛観を少女漫画で培った女にこそ沁みる、漫画「天然素材でいこう。」の味わい深さ

マンガParkの全巻無料キャンペーンに踊らされ、朝も晩もおうちで白泉社作品を読み続けている。 『動物のお医者さん』も『天使禁猟区』も無料期間中に読み終わらなかったけれど、10代の「花とゆめ」「LaLa」へのパッションが再燃してしまい、深夜に「あのマン…