It all depends on the liver.

飲みすぎないように文章を書く

12月22日、ジェルネイルをオフしたくなったときのこと(あるいは、Can I Feel at Home in This World Anymore?)

今日の18時半ごろに、どうしても今すぐ、自分の爪をまるはだかにしたくなった。

 

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クリスマス前で大忙しであろう渋谷のネイルサロン群に電話をかけまくり、「最終受付は19時なんですけど、今日はもうあいてないですね〜。満席です」という案の定の回答を幾度も受け止めて、最近はめっきり足をのばさなくなった渋谷駅新南口ーー新卒のときに入った会社が一時期オフィスをかまえていたーーのほうにあるネイルサロンにかろうじて滑り込んだ。

8月ごろから何度か施術を繰り返していたジェルネイルは、どのデザインも本当に納得のいくきらびやかなものばかりで、病めるときも健やかなるときも、一瞥するだけで私のテンションをぐいっと引き上げ、魂の戦闘力を高めてくれていた。定額デザインがかなり私好みのサロンも見つけて、押し花ネイルにホロネイル、メタリックカラーにシェルアートと、変わりゆくネイルトレンド・デコアイテムを次から次へと楽しみ、本当は、次はどんなデザインにしようかな〜なんてうっすら考えていたくらいだ。

ネイルサロンも、一度ジェルに手をそめた客を逃すまいと必死なわけで、「1ヶ月以内の再来店ならジェルオフ無料!」を掲げつつ、純粋にオフだけをしたい客からは3000円〜4000円をとるという、「それだったら、わざわざオフだけ行くのも面倒だし、またジェルネイルしちゃおうかな〜」と思わせる絶妙な価格設定を提示しているのである。

 

だから、来たる聖夜にあわせて、ホワイトカラーと雪モチーフなんかをあしらったかわいいネイルデザインの施術をお願いしたってよかったのだけど、朝から英会話に行って80分レッスンを受け、はじめての先生との自己紹介でつい「この休みの間に『スリル・ミー』という大好きなミュージカルを見に行く予定なの」と言ってしまったせいで、スリル・ミーのあらすじを英語で説明するという激ムズミッションが発生し"This is an Off-Broadway musical...but, Japanese version is directly based on a korean version..more abstract than Off-Broadway..."とオタクにしか伝わらないような細かいところから語りだしてしまって自分で自分の首を締めるも、「今日は5分くらいの遅刻で済んだし概ねがんばってしゃべった……」となんとか自分を励ましながら、最近見つけたミルクティースタンド(飲ん兵衛横丁のビストロを昼間だけ間借りしてるすごいイケメンがやっている)に立ち寄り、そこから家に戻って、郵便受けに届いていた「QUICK JAPAN vol.141」を回収し、マンションから強制されたインターネット回線とケーブルテレビの点検(と言いつつほぼ有料プラン勧誘タイム)に立ち会って、「お兄さんが回線のジャックを確認したときに、ベッドの裏手に落ちていた肌色成分多めのBLを見られてしまったのではないだろうか……」と後からかなりもやもやするも考えてもしかたないので諦め、QUICK JAPANをパラパラとめくっていたら宇垣美里さんのエッセイ「前世」に自分のことがちょっと出てきていることに驚き、しかもFacebookの「過去のこの日」機能からも、ちょうど3年前の12月22日に霊視鑑定を受けに行ったときのメモ写真がサジェストされてきて、そのタイミングの一致に驚き、「また占いとかオーラ鑑定とか行っても楽しいかもな〜年末だし」なんて思いながら、以前六本木ヒルズのSHISEIDO特設ブースで手に入れた試供品パレットから、ヴィジョナリーリップスティック 223 Shizuka Red(限定色というわけでもないのに全国で在庫切れの一品)を使って唇を赤く塗り、「あーーやっぱこの色ちゃんと欲しいなあ」という気持ちを新たにメルカリで検索し、購入ボタン押したさをぐっとこらえてコートを羽織り、傘を持とうか逡巡したけど傘という物体が嫌いすぎて(差していても差してなくても邪魔じゃないですか?)一旦持って下まで降りたのにわざわざ置きに戻り、数週間前に依頼をいただいた「少女都市」さんの一人舞台「誕生日がこない」アフタートークに出演するべく、自宅から徒歩15分ほどでたどり着ける新宿眼科画廊へてくてくと歩き、少し早く着いたのでギャラリーのほうをのぞいたら「死体写真展」なるものがやっているのにびっくりし、おそるおそる見てみたらマジですべての作品にあからさまに死体(手もあれば、腕もあれば、上半身もあれば、骨もあった)がうつっているが「SNS・撮影OK」なことにもびっくりし、こういったものはどう鑑賞すべきなのだろうかそもそも鑑賞していいものだろうかということを考えつつ、でも引き込まれる力があって一つ一つ眺めていたら、在廊していた方(こわもての長身男性)から「コレクターの方ですか?」と問われて、「コレクターってなんの!?」と戸惑ってしまってしどろもどろになり、そうこうしているうちに時間が近づいてきたので、地下にある劇場へと下り、受付で「アフタートークに参加する平松です」と挨拶したら、相手から「ひらりささんですね」と言い直して確認されて「ああ、ひらりさって言えばよかったかも」と反省をし、案内されるがままに、死体写真をならべたギャラリーの真下に横長に広がった舞台の両脇にならべられた椅子の、まんなかのやつにちょこんとすわり、徐々に他のお客さんも入ってきたところでお芝居がはじまり、その言葉と運動とにすっかり圧倒されて、「私なんかが何らかの解釈をぶっても、芝居後の余韻を台無しにしてしまうのでは……」と考えた結果、アフタートークでは脚本・主演の葭本(よしもと)さんのかわいさや思慮深さを引き出すことに専念してそこそこうまくいった感じがし、自分の役目をぶじまっとうできた安堵から「あ〜〜午後はのんびりシュガー・ラッシュオンラインでも観に行こうかな」なんて考えたところで急激に腹がすき、舞台のなかでも重要なファクターとなった「新宿遊歩道公園 四季の路」(あの、ゴールデン街の横をとおってるやつです)を通り抜けて、ラーメン屋に向かいたかったのだけど、ついつい紀伊国屋に足を踏み入れてしまい、SFマガジン百合特集号とonBLUE夏野寛子特集号を買いたかったんだけど全然置いてなくて、よくよく調べたら両方とも12月25日発売で、「そりゃ売ってないわけでしょ」と自分にツッコミを入れつつその場でAmazonで予約を入れて、でもなんだか紙の本をどっさり買いたい衝動が生まれたので棚をあれこれ見て回った結果として『鬼と天国』『82年生まれ、キム・ジヨン』『フィフティ・ピープル』『あなたの愛人の名前は』『トランスヒューマンガンマ線バースト童話集』を購入し、さすがに重いわ……という後悔にさいなまれたくせに、1階の雑誌売場で「TRANSIT 42号 韓国・北朝鮮 近くて遠い国へ」まで買ってしまい(もうここまで重かったらあと一冊増えても一緒じゃんと開き直った)、外に出たら雨が大粒になっていて、傘を持ってこなかった自分を馬鹿だなと思ったものの、空腹を放置していたのを思い出して、東口のそばにあるお気に入りのラーメン「麺屋海神」にいそいそと向かい、15時半という謎の時間帯に「あら炊き塩らあめん」をもりもりと食べ(パクチー、水菜、味玉もつけた)、すさまじい多幸感に満たされたものの、アフタートークのあとに葭本さんと撮らせてもらったツーショットを見返したらなんだか自分だけむちむちとして見えて、「痩せたいと思ってたのに、なぜラーメンを食べてしまったのだろう……」とプチ落ち込みモードになり、しかしそんなことは知らない海神のスタッフからスムーズにお会計を要求され、1230円を払ってビルを出たら高島屋が見えたので、「絶対なさそうだけど、SHISEIDOにShizukaRedの在庫見に行くか〜〜」と思いついてしまい、途中NEWMANのおしゃれショップたちの誘惑にひっかかりそうになりながら(AesopとメゾンキツネとACNE STUDIO入ってるの知らなかった……)、どうにか店舗にたどりついたら当然OUT OF STOCKで、「1月10日以降には入荷予定ですがお電話しましょうか?」と問いかけられたものの、「私は、今この瞬間に欲しい気持ちをどうにかしたいので……」と答えるわけにはいかず「いや、大丈夫です」とだけ伝えて退散し、そうこうするうちに、左手に持った本の山が子泣きじじいレベルに重さを増してきたのだけど、一度火のついた在庫探し欲をどうにかなだめるために、新宿小田急のSHISEIDO、新宿京王百貨店のSHISEIDOなどにも電話してみるももちろん品切れで、新宿伊勢丹店は電話するまでもないのでここでようやく諦めがつき、しかしラーメンを食べ過ぎた腹を軽くするためもう少しウインドーショッピングをしようと決意したところで、昨日ルミネエストの時計専門店「TORQUE(トルク)」から電話が来ていたのを思い出し、えっちらおっちらエスカレーターをのぼって、結露を取り除く修理に出していたSKAGAN(2年前のクリスマスに人からもらった)のデュアルタイムウォッチを引き取ったのだが、他のどの店よりも大量のカップルであふれていることに仰天し、「世の人たちはこんなにペアウォッチを使っているのか〜」とこれまで知らなかった世界の真実らしきものをかみしめながら下の階へと降りたら、ルミネエストのなかに韓国コスメブランドのショップができていて、愛用しているがもうすぐ切れそうだったETUDEHOUSE ティアーアイライナー(指原さんも使ってるらしいですね)を購入することになり、キラキラしたコスメを見ているうちに『だから私はメイクする』の座談会でも言及したジュエリーブランド・Biju mam(ビジュマム)が新宿伊勢丹に期間限定出展していたことを思い出し、途中メトロの窓口で定期券の再発行手続き(12月第1週に一度行ったのだがまたなくしてしまい、木曜に再発行依頼を出したあと、まだ実際の発行手続きをする時間がとれずにちまちま切符を買い続けていた)を、あきらかに12月第1週に対応してくれたのと同じ駅員さんに行ってもらい(何かの詐欺かと疑われないか死ぬほど不安でしたが特に何も言われなかったので相手は覚えてなかったかもしれない)、ぴかぴかのPASMOをポケットにつっこんで、意気揚々と伊勢丹の“お入口”(伊勢丹の入口にある看板には「お入り口」と書いてあるんですよ、ほんとうに)へと差し掛かったところで、男友達から「そういえばちょっと前に彼女と別れました」というLINEが飛んできて、これはどういう言葉をかけてあげるといいのかなあ……と考えながら伊勢丹地下食品フロアを見ていたら、なんだか素敵な紅茶が売っていたので、木曜におごってくれた会社の先輩へのお礼に一つ購入することにし、そのレジ列でLINEを返してから、2階のビジュマムに向かったら、前の出展よりもラインナップも増えていて、相変わらず盛況で、店員さんもとってもフレンドリーに接客してくれたんだけど、なんだか今日は「欲しいぞ!」という個体が見つからず、そういえば、漫画家の米代恭さんと24日に一緒にスリル・ミーを観てホームパーティーをする約束をしていたので、「今日は、米代さんへのクリスマスプレゼントを選ぶことにするか」と思考を切り替えて、ALBIONやキールズを眺めたけれどグッと来るものは見つからず、「いい加減原稿やるか……」(というか、今日荷物が重い原因のひとつとして、原稿やるつもりでパソコンを持ち歩いていたのもあった)と家に帰ることを検討しだしたのだけれど、そこで、原稿を書くつもりの取材のメモのうち2つほどを、会社に置いてあるほうのパソコンの中に保存していたことに気づき、どうにか最後の精神力をふるいたたせて、副都心線で会社に向かい、デスク横にしまっていた自分のパソコンから必要なデータだけをメール送信して、子どもたち向けのクリスマスパーティーのために休日出勤していた同僚と軽く挨拶をかわして、床におろしたカバンと本をもう一度背負い、えっちらおっちら会社を出たら、もうどう考えても、午前の自分が思っていたようにシュガーラッシュオンラインを今から観に行く気力はなくって、っていうか今書いたようなことを全部がーーーーーーーーーーーーーーーーーっと思い出して、なぜ私は、最初に入れていた予定だけで満足すればいいだけなのに、こんなにも、隙間なく間断なく、何かをしたり見たり聞いたり思い出したり街をうろうろしたりモノを買ったりしたうえに、TwitterとLINEまでしているんだろう……という、考えても仕方ないことを考え出してしまい、は〜〜〜〜もっと落ち着いて暮らしたい……と思って、じっと手を見たら、自爪の上にきっちりと乗ったネイル10本の重さが、肩にかけた紀伊國屋書店の紙袋よりもはるかにヘヴィーなものに感じられてきて、ついでに、以前どこかで聞いた「ジェルネイルをずっとしていると、爪が呼吸できなくなる」という噂まで頭にうかんできて、「今すぐこの重さを取り去りたい」と強く強く願ったがゆえに、クリスマス前で大忙しであろう渋谷のネイルサロン群に電話をかけまくり、ジェルオフのみ3000円のコースをお願いした次第なのでした。はい。

 

ファンシーな空間には場違いに思えるドリルとノミでガリガリと10本の爪を削られながら、「そういや『ネイル』だって爪なのに、爪っていうと爪のことで、『ネイル』っていうと爪のうえに塗るもののことなのって、おもしろいよな〜。まあ、『ジェルネイル』や『ネイルポリッシュ』を略した結果そうなってしまったんだろうけどな〜〜。日本語だと『それそのもの』ぽくて、和製英語だと『ガワ』っぽいものって他になにかあるかな〜〜〜『魂』と『ソウル』とかもそうかな〜〜〜〜」という、別に気が利いているわけではないよしなしごとをぼんやり考えていたら、今日の心と頭と身体に蓄積していた膨大な情報の枝葉は、だいぶさっぱり洗い落とされて、心と頭と身体も落ち着いてきました。というか、定期券を2回紛失したことからも、飲み会のたびに「躁じゃない?大丈夫?」か「心ここにあらずだけど大丈夫?」のどちらかを問いかけられていたことからも、この1ヶ月くらい明らかに情報過多で自分のなかのなんらかのメモリが過熱していたのだけど、その熱がジェルとともに爪から逃げていったかのようなさっぱり感がありますわね。よかったよかった。

 

結局あとから調べたら、爪の呼吸に関しては、「爪は髪の毛と同じく、死んだ細胞なので爪自体呼吸はしておらず、ジェルネイルをしていると呼吸ができなくなるという情報は間違いです」らしい。なので、この「息のしやすさ」については、たんに私がそう思っているだけ説が濃厚なのだけど、ジェルネイルをしつづけると、爪が乾燥しやすくなって、弱くなったり割れやすくなったりするのは事実だそう。もちろんジェルをしたまま甘皮の保湿をしっかりとやれば問題ないのだけど、無精な人はやっぱりおやすみの期間をつくったほうが良いようだ。飛び入りの私に快くジェルオフしてくれたネイルサロンのお姉さんに最大限感謝しつつ、爪も心も頭も身体も、適度に休めていこうな自分……。

 

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普段こういうのはnoteに書いているんだけど、その「おやすみ」の意味も込めて、半年ぶりにはてなブログを書いてみた、2018年末なのでした。