It all depends on the liver.

飲みすぎないように文章を書く

ウェブ編集からゲームプランナーになって半年で気づいたこと

アオヤギミホコさんの書いていた下記エントリがすばらしかったので、私も真似っこしてみることにいたしました。

ao8l22.hatenablog.com

 

2015年12月までウェブ編集者をしていましたが、転職してゲームプランナーとしてソーシャルゲームを作っています。「なんで?」っていろんな人に聞かれるのですが、わたしも「なぜだろう……」と思ったりしています。ウェブサービスとゲームと両方やってる会社だったので、まあウェブサービスのほうに従事するんじゃないかな~と思っていたのですが、「君は新しいコンテンツをつくるほうが向いていると思うよ」と社長に言われて、ふつ~~にソシャゲをつくっています。

扱うコンテンツ自体が、ウェブのときはずっと文字主体・ノンフィクション(というかエッセイやコラム)主体で仕事をしていたのに対し、今はイラスト主体・フィクション主体の内容を制作しているので、まあ全く違うだろと戦々恐々としていたのですが、意外と頭の使い方とかは似ているなと思ったので、その辺を書いてみます。

※ちなみに今開発中のゲームに従事しているので、運用フェーズだとまた違うだろうというツッコミはご容赦ください。

 

まず、ウェブ編集をしていたときの私の仕事内容は、

1)著者をリサーチ、企画を立てる
2)著者に依頼、内容を相談、契約、原稿を書いてもらう
  あるいはインタビュー取材、対談取材などを行い、ライターさんに構成してもらう(適したライターがいなかったら自分で書くこともある)
3)原稿をチェックして修正加筆などやりとりする
4)スケジュールにあわせて記事をUPする
5)SNSメールマガジンなどで拡散=プロモーションを行う→1)に戻る

という感じでした。

そして現在ゲームプランナー(ゲームは開発中の段階、他社版権もの)としては、以下の仕事をしています。

【デザインの進行・契約管理】

1)1カ月単位で、ゲームのリリーススケジュールにあわせて各作家や社内デザイナーに依頼する、デザインリソース(イラストとかUIデザインとかアニメーションとか)の制作個数、制作内容を決める

2)(制作内容をデザイナーに伝えるための)仕様書を各プランナーに振り分ける、もちろん自分でもつくる

3)作家や社内デザイナーに依頼、外注の場合は業務委託契約をして制作してもらう

4)ラフが上がったら版元へ、線画仮塗りが上がったら版元へ、仕上げが上がったら版元へ送り、監修してもらう

5)その月の締め日までに納品が終わりそうなめどがたったら、請求書の発行をお願いして支払い手続きの稟議をすすめる→1)に戻る

【音声収録】

1)音声制作会社と相談して、だいたいのワード数、キャラ数、予算、スケジュールなどをふまえつつ業務委託契約

2)キャラクターごとの音声収録資料、セリフを外注するor自分でつくる、監修とおったら台本を制作会社に送付

3)音声収録に立ち会う、その場でのセリフ修正など記録しておき、台本に反映

4)音声データもらったら開発会社に送る→アップデートの企画が決まったら1)に戻る

【プロモーション】
1)リリースまでのプロモーションスケジュールを立てる(Twitter、サイト、事前登録、その他プレゼントなど)、目標数値をたてる

2)内容についてのざっくりした企画書をつくって、各外注先(広告代理店、ウェブ制作会社など)に見積もりを依頼、OKなら業務委託契約

3)内容についての詳細な仕様書を都度都度つくる

4)適宜必要な関係者に確認をとりつつ世に出す

5)数値を確認して改善しつつスケジュールを消化

【その他プロデューサーの補佐】
外部に提案にいくときの資料とか全社会議の資料とか上司が送る予定のメールの文面とか作る

 

ってな感じです。入社初日から「じゃあイラストの制作内容の仕様書つくってくれる?」と言われて、「え、ソシャゲの作り方まったく知らないのにそんなことして大丈夫っすか???」と思ったというか、初日から「再転職」でググったりしていましたが、意外と楽しくやっています。

 

で、編集とプランナーという仕事について似てるな~と思ったこと。

似てるな~と思ったこと

「なんでもや」である

「人に頼めないことは何でも自分でやる」というのが編集とプランナーの最大の共通点ではないかと思いました。編集の場合、適したライターさんがいなけりゃ自分で記事構成しないといけないし、カメラマンにさく予算がなけりゃ自分で一眼レフ持ち出さないといけないし、っていうか「SNSメールマガジンでの拡散」も(必要なことではあると思いますが)、もともとは編集の仕事ではないし。

というわけで「なんでもやります!(なので未経験だけどがんばります!)」というのを一応のアドバンテージとして入ったんですが……プランナーのほうがなんでもやる仕事でした。さっきえらそー「仕事内容」を書いてみましたが、これはあくまで「わたしの場合」であって、右隣のプランナーはずっと資料の翻訳作業をしているし、左隣のプランナーはゲームバランスの調整やスクリプトの修正をしているし……みたいな。シナリオライターいても、細かいイベントのシナリオを急きょ書かないといけなくなったり、つーかプロモーションも広報担当がやる場合とそうじゃない場合とあるみたいですね。編集のとき以上に意外な仕事がふってくるので毎週ぜんぜん違うことやってて楽しいです(これは開発段階だから、だとは思います)。なお、わたしの仕事内容は、わりと「アシスタントプロデューサー」っぽいらしいです。

進行管理、スケジュール調整能力がとっても大事

プランナーとしてはひよっこですが、これまでも「毎週その連載の記事が載るように進捗を管理する」「どの著者の原稿がきていてどれが来ていないかなど把握して対処する」ということをやってきたので、進行管理の仕事が最初からスムーズにやれたのはよかったです。ただ、編集のときよりも管理する個数が多い、契約もかならず契約書をつくって稟議を出して行わないといけない、つねに数カ月先まで外注先の制作ラインを把握しておかないといけない、などの点では、プランナーのほうが進行管理能力の比重が高い気がします(むしろ書籍編集っぽいのかも)。

 

「即レス」が大事

ウェブ編集のときは、「著者さん/ライターさんがせっかくあげてくれた原稿に対して、とにかくいったんは拝受の連絡をするのが礼儀だし信頼関係」ということで「即レス」の大切さを説かれていましたし、心がけていましたが、プランナーになってからも「即レス」が大事でした。というか、これは「他社IPもの」で、自分たちとは別の「監修」が入るぶん時間がかかるので、とにかく自分のところでボールを止めてしまうと納期がおそろしく伸びてしまう可能性がめちゃくちゃ高まるのです。あとものすごく制作点数が多いので、来た瞬間に返信しないと、何を監修に出して何が戻ってきたのかがわからなくなる。そのうえ、別に気の利いた感想とかは求められない、「あんまり早く返してもちょっと情緒ないよな~」みたいなこと考えない。ので、むしろ編集時代より「1分たたないうちに返信」みたいな感じで即レスしています。

「根回し」が大事

編集については、あとで編集会議で企画を通すにしても、著者さんにイベントで会っていたり先にコンタクトしておいて企画の実現可能性や方向性を高めておくというのが大事だったな~と思っているのですが、プランナーというかゲーム業界の場合、「この制作会社にアクセスするには、この人から紹介してもらって顔合わせをする必要がある」みたいなことが多いです。けっこう挨拶に行きます。あと、「こういう知り合いがいて、このプロモーションでここの会社とこういう企画やったらおもしろそうじゃないですか?」「こういう版元と知り合いで、こういう提案でコラボしたらおもしろそうじゃないですか?」みたいな提案は結構組んでもらえるので、個人の人脈は(いかそうと思えば)わりと仕事に役立ちます。

人に「伝える」仕事である

これはプランナーになってびっくりしたのですが、とにかく人にモノを伝える、いかに気持ちよく仕事をしてもらえるか考える仕事という点で、編集とすごく似ているな~と感じました。もしかしたら一番の共通点かもしれません。

 

 

で、違うな~と思ったこと。

 

あんまり外に出ない、つーか個人で自由にできる時間がない

ウェブ編集時代は、たとえばちょっと仕事に関係しそうな映画の試写会とか(もちろんいずれ取材する前提で)、ちょっと仕事になりそうな人との顔合わせとか(もちろんいずれ企画をやる前提で)、どんどん入れて、基本的に自由に単独に外に出られたのですが、プランナーになってから籠の鳥です。きちんと仕事になることが決まっていることしか業務時間内にできないし、ひとりで動くことはなくてだいたい上司が同行します。わたしはこれがかなりストレスで(サボりたいということではない)、「同じ場所行くけど、ちょっとランチしてから行くので先でます」とか「同じ場所行ったけど、まだ休憩とってないので直帰します」とかで何とかストレスを逃がしています……。あと、音声収録の担当になったぶん、出入りができてストレスが軽減した。

 

外注先、社内人員、自分の作業量についての「工数管理」感覚が大切にされる

集団で行うプロジェクトなので、「俺が徹夜すれば何とかなる」はやってはいけない。たとえ翌朝ぴんぴんしていて、仕事が無事に期限内に終わっているにしてもダメ。やっていいのはプロデューサーだけということになっています。まあ残業代が出ない裁量労働制というのもあるのですが。もちろん外注先にも無理をさせてはいけない。運用体制に入ったらまた違うと思うのですが(月内の数値目標を達成するために今日中にイベントの仕様切らないと……みたいな場面が起きるようになってる人はやっぱ残業している)、私は10時出社で基本20時~21時には帰っています。これは「個人で自由にできる時間がない」のと表裏一体かもしれません。

作家さんから来た成果物に対して容易に感想を言えない

自分が仕様切ったイラストがあがってくると「か、かわいい~~~ありがとうございます!ここがいいですね」なんて感想を言いたくなるのが編集の性なのですが、わたしにはそういう判断をする権限はなく、あるのはプロデューサーと監修者なので、迂闊にほめたりしてはいけない……。

職場でプライベートの話をしない、っつーか雑談しない

ランチのときに多少そういった会話になることもありますが、「休日何してるの?」とか「恋人いるの?」とかマジで聞かれたことがない。これは単にわたしが友達がいないということ&職場の親密度の問題かもしれませんが、「ウェブ編集の属人性」と「プランナーの非属人性」と関係しているのかなと思いました。

編集は都度都度自分が主体となって企画をたてるので、個人の好みや生活スタイルなどが制作物に大きくかかわる仕事だと思います(自分自身の好みをそのまま企画としてコンテンツにするときだけではなく、世の中のニーズをくみとって企画をたてるにしても)。プランナーの場合、ゲーム自体の企画をたちあげた本人でないかぎり、あまり個人の好みや生活スタイルは反映されないかなと思います。

別に自分のプライベートを話したいわけではないのですが、あまりにも声帯を使わないので、むしろ飲み会が増えました。

責任者はプロデューサーであり、プランナーに責任はない

なんでもプロデューサーが決めるので、なんでも聞きます。まあこれは個々のプロデューサーの性格の問題かもしれません。最近は「これについてはあなたを信頼してるし全部まかせます」みたいな感じで、ひとまずCCしてればどんどんすすめていいことも増えました。が、だとしても、もしそれでミスがあったら責任はプロデューサーだし、プランナーと外注先の関係が悪くなる、みたいなことではないですね。そのぶん、大きなお金が動いていても安心して仕事ができるところはあります。

どんどんメンバーが増えるので、3カ月たてば「古株」だし、後輩を指導する必要がある

もともと2人くらいのチームに入ったのですが、半年で10人を超えていて、なぜかまとめ役をやっています。ウェブ編集時代はそもそも人がそんなにバンバン増えないし、入ってくる方は何かしらの編集経験が私よりある人たちだったので、3年くらい下っ端でした。プランナーの場合、「これまでの経験」以上に「このプロジェクトにおいて何が行われているか」「このプロジェクトにおいて外注先とどういったやりとりをしているか」などを把握している人間が先輩になります……。あと単純に自分より下の年齢の人がどんどん入ってくる。後輩の仕事に対しては、外注先に対してと違い、きちんと自分の考えでFBをしないといけないので、わりとリソースがさかれています。マネジメントの勉強とかをすべきな気がする。

支払い、契約の期限にたいして非常に厳密

これは私の前職ではなく、むしろ自分がライターとして他の会社の仕事を請けたりしたときの印象との比較ですが、紙・ウェブ問わず出版系の支払い・契約の慣行のゆるさはやはり他業界では通用しないのだなと思いました……。ぜったい契約書先にかわすし、支払い期限はそこに書いてある。話によると、動画制作、音楽制作とかは見積もりベースで請求書をなげてきたりするらしいので、動くお金のケタの問題もあるかもしれません。


稟議が……めんどくさい……

初回だけでなく毎月の契約や支払いのたびに稟議を出さないといけないのが……めんど……くさい……(でも、もう後輩に全部投げられる身分になった)。


パワーポイントをめっちゃ使う

仕様書も企画書もその他資料も基本パワーポイントで使います。ワードはめったに使いません。あとエクセルも多いかな。

 

戦国時代や三国志ケルト神話やミリタリーに詳しいと重宝されます

されます!!!

 

こうやって書くと編集者というのはやっぱプロデューサーに近いのかもなーと思ってきました。

ちなみに今の上司はめちゃくちゃ忙しい人ですが、マジで怒りません。怒らないけどそんなに褒められもしないので、私の仕事をどう思っているかマジで不安なのですが、とりあえず、

・進行管理はできている
・プロモーションも大丈夫
・女子のお色気イラストにひるまないのもいい
・外注先に対して「下請け」という態度をとる人間がいるが、そうじゃないのでいい
・へんな「こだわり」がないのがいい
・自分の意見がとおらなくてもふてくされないのがいい

といったあたりは言われたのですが、それは編集時代に鍛えてもらったからだな~と思っております。今のところは「再転職」では検索しなくなりました。しかし、責任の所在があまり自分にない・属人性が低いのでここの仕事があまり脳のリソースを食わない、という理由のせいか、仕事の種類としては幅広いのに、なんか脳がヒマで酒をたくさん飲んでいる気がする……仕事でもっと消耗したい……。